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森の工房通信 No.15 2000年秋号 2000年九月30日発行 文責 橋本和吉
NO15

2000年秋号

2000年9月30日発行

文責 橋本和吉
木の旅 2000年5月 オークヴィレッジ編
 昨年から我が家の貧乏旅行につおーい味方ができた。キャンピングカーというほどではないが、屋根が開いて二階建てになるCMに出てくるあの車である。
 厳密にいうとよく見るM社のものではなくH社のもので、内容に大差は無いのにM社のものより「ひゃくまんえん」も安いのであるから選択の余地などない。中古で買った乗用車の調子が悪く、仕方ないのでお金も無いのに急きょ買うことになったのである。これでホテルや旅館に泊まる必要が無いので十分に元が取れる!と踏んだのだが、一泊5000円などという安宿にばかり泊まっている私達にそんな計算が成り立つのだろうか?
 まあとにかく岐阜高山に向けて出発!磐越道から北陸道に乗り富山県の砺波インターまで移動。この車の最大のメリットは夜間の移動が可能だということである。チェックインの時間など気にせずに眠くなるまで移動、あとは広いところやわき道に入って眠ればよいのである。えっオートキャンプ場?そんな所に泊りませんよ、高いお金払ってあんな分譲地みたいな所に泊まって何が楽しいのか私には理解できないし、キャンプ自体を楽しむ気はあまりないのですから。
 五箇山に入るトンネルの旧道に入ってまずは一泊、深い霧の中で静かな夜だった。有名な世界遺産白川郷を通って高山に入ろうという計画である。
 翌朝トンネルを抜けると霧も晴れて快調だ。道の駅で洗顔やトイレを済ませパンをかじりながら、急峻な山あいに古いたたずまいを見せる街道を走る。
 二時間ほどで白川郷に着く。ここは長い間一度は訪れたいと思っていた所である。かやぶき、合掌造りの古い民家がたくさん保存され、周りにはなつかしい田園風景が広がっている。まるで時代から取り残されたかのように佇むほんの少し前の日本の風景だ。その古い民家で今も人が生活していて、だからこそすばらしい文化なのだと思う。無論住む人たちにとっては維持費だって大変だろうし、新しい洋風の家に住みたいという思いや古いものに縛られた暮らしの窮屈さもあることは察するに余りある。でも数少ない日本の素適なものなのだから出来る限り残してもらいたいと願わずにはいられない。
 ご多分にもれず川をはさんだ土地には公園化された素晴らしい民家園が整備されている。維持できなくなった民家を移築し管理するためには止むを得ないのだろうが、これはもはや観光施設で文化とは遠い存在に思えてならない。
 ゆっくりと辺りを散策し5月の風を満喫したあと、民家のような蕎麦屋でウルイの葉っぱにのった腰の強い蕎麦を食べる。旅をしている気分がとてもおいしい。
 駐車場まで帰る道で上空を自衛隊の戦闘機が轟音を響かせ飛び去った。世に言う低空飛行訓練なのだろう。今自分達のいる風景とのあまりにも大きな違和感に怒りが込み上げてくる。人間は何か大きな間違いを犯しているように思えてならない。
Oak Village お腹もいっぱいになったところでオークヴィレッジに向かう。
 オークヴィレッジというのは稲本正という人物が4人(だったと思う)の仲間と26年前に始めた家具製作の工房で、その後雨後の筍のように発生した我々のような工房の本家、元祖、神様、仏様のような存在で、なんとテレビドラマにもなったことがあるのです。この周辺の地域はもとより全国的に大きな影響を与えた工房なのです。
 稲本正というのは、ひげを蓄え作務衣を着ている姿がテレビや雑誌でよく見かける有名人で、作っているナラの重厚な家具のような威厳がある・・・ように見える人物で、木工のみならず、森や地球環境に至るまで造詣が深く、今や講演会や執筆活動の方が忙しいのではと思うほどなのです。もしかしたらこの人は頭で木を削れる人?なのではと冗談でなく思ってしまうのであります。私はとても真似できないので手で削ります・・・。
 現在では家具、小物、から建築まで手掛け、物作りと環境教育のプロを養成する「森林たくみ塾」や自然に遊び学ぶ「森の自然学校」、広葉樹を植林する「ドングリの会」というような活動までやっていて、ショールームから喫茶、レストランまであるこの「森と工芸の村」は高山市の隣、清見村の山あいにありました。
 看板に従い細い道に入る。まだ新芽が出始めたばかりのこのあたりは、随分標高が高いのだろう。まずはショールームを見学。土壁の立派なショールームには家具やシステムキッチン、食器や文具、おもちゃなどのクラフトが並んでいる。商品は見慣れているので雰囲気を吸収していくことにして地下の「森の博物館」へ。
 ここは「木」の文化資料館といった感じに木の標本から箪笥や太鼓などが展示してあるが、博学にはなるがあまり面白くない。喫茶「リトルオーク」でお茶でも飲んでいきたいとも思ったが子供連れで入れる雰囲気でもないので断念して帰る事に。雨で歩けなかったけれど小川沿いにネイチャートレイルという遊歩道があるらしく、水車のオルゴールがあったり、プレートのかけられた木があったり展望広場もあるらしい。
 次に向かったのは匠の森という高山市内にある工芸村。どうやら大手のリゾートホテルの付属施設として作られたらしいこの村は一応、ガラス工房、彫刻工房、藍染め工房、ハム工房、物産館など立派な工房が集まっているのだが何だかつまらない。何か違うんだよね何かが・・・夢がない・・・のかな???
 温水プールで子供のストレスを発散させて、飛騨牛のおいしい食事をしても宿泊費は0。何と言うリッチな気分だろう。今夜は雨なので国道沿いの道の駅でご一泊。何故って雨の中用を足すのはできれば避けたいので・・・。

 次の日はうって変わっていい天気。ちょっとした勘違いできのう見られなかったウッドフォーラム飛騨という工芸品を展示している公共施設へ向かいます。いかにもという立派な建物の公共施設で、清見村で活躍している工芸家の作品をそれなりに展示してはあるのだけれど、どうやってこの建物のもとを採るつもりなのだろうかと貧乏人は考えてしまうのです。
 さてこの先は特に予定が無い。次にどこへ行こうかと地図を眺め、せっかく来たのだから名古屋辺りまで出てみるかなどというのだから何と無計画な人たちなんでしょう・・・。
 まず「ひるがの高原」という所にある「牧歌の里」という公園を目指すことにします。
 おそらく第3セクターなのでしょう、白山を望むよく整備された丘の上には色とりどりのきれいなお花畑が広がり、パン工房、ハーブ工房、動物とふれあえる牧場、バーベキューレストラン、食品加工やクラフト体験が出来る体験工房などの施設がそろっています。
 まず何をしようか、と考えていると目の前におかしな建物が・・・「木ぼっくりの館」と看板があるこのお金のかかった建物の中にあったものは何と木の枝で作った人形なのです。いいですかよく考えてください、体育館ほどもある建物に大きさ10センチ〜20センチくらいの人形が展示してあるのです。もちろんその数は数え切れないほどで、さまざまな立体的な情景の中にいろんな表情をした人形達がいて面白いし、動きの工夫もあって牧歌的な雰囲気を醸し出しなかなか見ごたえはあるのですが、この一つのテーマでこの建物を建ててしまうという発想に開いた口がふさがらないのです。
木の人形 ちなみにこの作者はこれから行くのは水野政雄さんという造形作家で、その作品は非常にユニークで私好みではあります。興味のある方は小学館から本が出ていますのでご覧下さい。
 何だかとても関心?したあとは花梨ちゃんと広子さんはパン作り体験へと向かい、私と風人君は牧場で動物とふれあうことにしたので。やぎさんにエサでもあげようかと思ったのですが、なんと情けないことに風人君は怖がって逃げ出してしまったのです、やれやれ・・・。
 それではというわけで馬にでも乗ってみようかと話をつけて乗馬コーナーに行くと、何とそこにはジーンズにブーツ、そしてカウボーイハットをかっこ良く決めた係の「おねいさん」がにこやかに微笑んでいるではありませんか!
 かくしてこの瞬間から私と風人君は「しんちゃんととうちゃん」の組み合わせになってしまったのでありました。この「おねいさん」はとても親切、笑顔が印象的で、馬場を一周し記念写真を撮ってもらうととても幸せな気分になれるのでした。
 パンを好きな形に作って焼きあがりの時間を待つだけになった二人も合流し、そちらでも係の対応がすこぶる良かったとのことで(プロの接客というよりは温もりのある牧歌的なさわやかさ)、3セクとはいえ接客の仕方でずいぶん印象はよくなるものなのだとつくづく感心させられた。お昼を食べたバーベキューレストランでの対応もなかなか良く天気と風景の良さもマッチして、とても好印象の施設となったのです。いえいえ乗馬のおねいさんがかっこ良かったからだけではありませんよ、決して・・・。
 お花畑や工房、ショップを散策して焼きあがったパンを受け取り、大満足で次の場所へと向かいます。

 次なる目的地は郡上八幡。広子さん曰く「よく殺人事件の起こる場所」なるほどサスペンスの舞台というわけか。郡上踊りなどでも知られる川沿いに広がる割と有名な小さな町です。
 歴史のある城下町の常で道は細く入り組んでいてこういう町は歩くに限ります。狭い駐車場に車を止めガイドマップ片手に歩いてみると昔ながらのせんべい屋さんや、呉服屋さんといったような古い建物が軒を並べしっとりとした印象の街です。
 やがて「さんぷる屋」という面白い店を発見。何の店だと思いますか?そうなんです。本来は食品のサンプル(食堂のショーウインドーに並んでいるロウでできた作り物)をつくる町工場なのですが、その技術を生かしキーホルダーやインテリアとして販売している店なのです。和風の古い作りの店構えに梅干やすしなどのキーホルダーなどがぶら下がっていて、それがまたなかなかよく出来ているのです。思わず数点購入してしまいました。
 さてこの町に寄った一番の理由は先ほどの水野政雄さんのギャラリーがあるからなのです。ギャラリーへ通じる小路は「水の町郡上八幡」を表現するかのようなアートで道と水路が作られていて思わずうなってしまいます。
 ギャラリーは遊童館と名付けられた小さな三階建ての建物でそれぞれ絵、立体造形、紙の造形とコーナー分けされ多彩なこの人の才能を垣間見ることができます。芸術家なのだけれど芸術家らしくないそんな好印象をうけました。時間が無くてゆっくり出来ませんでしたがもっと見て歩きたい町でした。
子供といっしょに次はどこへ行こうか!
 郡上八幡に別れを告げ日も暮れてきましたのでお風呂でも探そうか、と思って走っていると「子宝の湯」という大きな看板。看板に従って入っていくと川沿いにプレハブの小さな建物が・・・一瞬戸惑ったもののええい旅はこういうのが面白い!といくらですかと訊ねると「志で・・・」「え・・・」つまり基本的に無料なのです。400円を箱に入れて入ると半露天のいい感じの湯船があって、地元の老人らしき人達が数人入っており、全く聞き取れない言葉で会話しておりました。
 近くの道の駅で一泊し最終目的地の名古屋に向かいます。名古屋の何を見ようかと考えたのですが午前中ぐらいしか時間がないので有名な明治村でも見てみようか、ということになりました。明治時代の古い建築物が移築、再現されていて悪くはないのですが子供連れには少しつまらなかったかな。
 というわけで今回の旅も終わり、正味9時間の帰路に向かうのでした。

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