WOOD CRAFT 森の工房
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森の工房の情報、木にまつわる話から家族の話まである不思議な通信

森の工房通信 No.23 2003年秋号 2003年11月5日発行 文責 橋本和吉
NO.24
2004年春夏号
2004年7月20日
発行

文責 橋本和吉


生きること死ぬこと
 日本テレビ系列で山口県の山奥で暮らす老夫婦の年月を追った番組が放送された。
 この夫婦は山奥の開拓地に入植し田や畑を切り開きながら三人の子どもをもうけたが子育てには経済的に厳しく都会に仕事を求めて子どもを育て上げた。そして子どもが巣立った後夫婦は二人で開拓地に戻り粗末な小屋で自給自足に近い暮らしを始めたのである。すでに年齢は七十代、悠々自適の暮らしに次第に老いが影を落としていく十数年をカメラは淡々と追っていく。気負いが無く飄々としながらもしっかりとした意識を持って、子どもたちの都会で一緒に暮らそうという誘いにもがんこなまでに耳を貸そうとはしない困ったじいさんたちなのだ。とうとう根負けした子どもたちの方が山に通うようになる。自分たちはここで生きてここで死ぬ、それで十分それだけでいい・・・そこには確固とした命の意識と生死感が存在しているのである。なんと言ってもどちらかのわがままではなく二人が年老いても仲良く、同じ意識を持って生きていることがすばらしい!と思わずにはいられない。おんぼろバスの中のダブルベッドで寄り添う夫婦の姿は実に美しいではないか!生きるということはこういうことだし、夫婦とはこういうものだし・・・と思うのは私たちだけか?はやりの熟年離婚などという話と は全く無縁の世界である。
 やがて抗しがたい老いが二人に訪れる。元気で力強かったおじいさんが一本の薪を割るたびに大きく息が切れ、食事の支度も楽しさが消えて空腹を満たすためだけのものになっていく。止むを得ず医療老人ホームに一時的に入所したりしながらも山が恋しい二人の表情は実に涙を誘うではないか。やがておじいさんにガンが宣告されるが夫婦は山に戻る。子どもたちはどうすべきかを話し合うが、最後にはおじいさんを山で見送りたいという次女の意見に涙ながらに賛成するのである。あまり動けなくなった夫婦の代わりに子どもたちが山に通い畑を手入れし、米を作ろうとする姿を映しながら番組は終わる・・・。
 この夫婦の幸福を何と表現しよう。願わくば私たちもこんな風に老いてこんな風に死を迎えたいと望むのである。無論病院ではなく生命のあふれる自然の中で。それがそんなにわがままなことなのだろうか、それがそんなに悪いことなのだろうか。その人の命と人生はその人のもの、その人が望むようにしてあげるのが一番でその幸福の意味をわかっているのだからこの子どもたちは両親を深く愛しているのだと思う。しかしながらこの国にはこの子どもたちの判断を批難する人も多いような気がしてならない。この国はまじめに生と死を考える人には暮らしにくい場所のような気がしてならないのは気のせいだろうか。
 さあ私たちも人生後半、これからをどう生きて死ぬか、難しくて簡単な問いを自分たちにしていかなければならないと改めて考えさせられるいい番組だった。
 とはいえ今年も畑は草ぼうぼうのまま鍬が入る気配は見られない・・・困ったものである。

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